10/5(水)に、上京区役所にて「パネルディスカッション~熊本地震派遣者の体験報告会」が行われ、本学ボランティアコーディネーターの澤村と学生スタッフARCO副代表の岡本がパネラーとして登壇いたしました。
初めに、上京区長の中谷様より開会のご挨拶があり、今回が避難所運営力向上講座の一環であることや、京都市の取り組みについて、のお話がありました。
次に、「熊本地震支援活動~健康支援・食の衛生支援の立場から~」というタイトルで、上京保健センター長の西村様よりご報告がありました。
まずは、京都市の支援状況をご説明いただきました。派遣職員は550名で、専門チームの派遣や支援物資の提供、避難所の運営補助など、様々な分野で支援をおこなったそうです。現在も義援金の呼びかけや市営住宅の無償提供、京都市立学校での児童受け入れをしていらっしゃいます。
また、京都市保健師・管理栄養士の支援活動について、お話しいただきました。現地では、避難者の健康状態の把握や健康相談、食生活支援、各機関との調整といった活動をされたそうです。また、5月中旬から全家庭訪問を目指して、ニーズ調査もされました。派遣終了後は、今後のために派遣依頼があったときすぐ対応できる体制をつくっていくことと、京都で同様のことが起こったときに対処できるように確認しておく必要があると、改めて感じられたそうです。
そして、「現地派遣者によるパネルディスカッション」が行われました。パネラーは本学2名を含む7名で、大黒氏(上京区役所市民窓口課長)前田氏(同健康づくり推進課長)森川氏(同健康づくり推進課担当課長)藤井氏(同総務・防災担当職員)鈴木氏(上京区社会福祉協議会職員)が登壇されました。コーディネーターは、京都市まちづくりアドバイザーの松井様が担当されました。
まずは、熊本へ行く前と行ったあとのギャップについてお話がありました。登壇者全員に共通していたこととして、刻々と状況が変わっていくので臨機応変な対応が求められたこと、京都で聞いていた状況と現地の状況が異なっていたこと、情報が支援者側、被災者側にも行き届いておらず、うまくニーズのマッチングができなかったこと等が挙げられました。一方専門職で入られた方々は、阪神淡路大震災や東日本大震災からの教訓を活かし、チームを作られているということで、役割分担がきちんとなされ、情報網も確保されていたような印象を持ちました。
最後に、上京区で同様のことが起こったときに体験をどう活かすかというお話では、日頃から情報交換ができる体制作りや関係作りの重要だということや、非常時は情報を一括して整理すること、また地域の方々には情報をキャッチできるような体制作りが重要であることが確認され、パネルディスカッションが終了しました。
その後、まとめとして神戸大学名誉教授の室崎氏よりお話がありました。今回の体験談から学んだことを京都でどう活かすかという点については、避難された方の規模を京都に当てはめ、どれくらいの場所が必要かを想定すること、こちらから本当の支援を必要としている被災者の方に会うとリーチしていく体制を考えること等ができるのではないかとの投げかけがありました。また、今回の関連死は50名にも上り、これは救えた命であったということも、教訓にしなければいけないとのお話もありました。
それから、熊本のある小学校では災害時の食事メニューを事前に決め、材料を誰が用意すかまで決まっていたことが今回機能したという事例があったそうです。そのような参考にできる事例も取り入れつつ、現在京都にある運営マニュアルや食の専門職が支援できる体制については評価すべきものであるので、より一層取組を進めてくださいとの激励の言葉がありました。
最後に、会場からの質疑応答の時間では、本学の岡本に寄せられた「やりがいは何でしたか」「なぜ2回も熊本へ行こうと思ったのですか」との質問に対し「やりがいは“ありがとう”と現地の方に言っていただけることで、役に立てたという気持ちになれた。2回行ったのは、1回目行ったときにまだできることがあるのではと思ったし、被災状況をもっときちんと自分の目で見たいと思いました。」と学生が答える一幕がありました。
今回の熊本地震で、実際に現地に赴いた方々のお話を聞き、教訓となることがたくさんありました。いつどこで地震が起きてもおかしくない日本で、これからどのように対策していくか、関心を向けていくとともに、今後も熊本への支援を続けていこうと思えるような会となりました。